- 12月 2, 2025
受験期の生理の悩み
受験シーズンが近づくと、「勉強に集中したいのに、生理がつらい」「受験の日と生理が重なりそうで不安」というご相談をよく受けます。
受験をひかえた時期は、精神的にも身体的にも大きなストレスがかかります。生活リズムが乱れたり、緊張が続いたりすることで、生理周期や症状に変化が出やすくなるのです。
今回は、受験期に起こりやすい生理のトラブルと、その対処についてお話しします。
ストレスや生活リズムが生理に影響する理由
生理のリズムは、脳の視床下部・下垂体と卵巣の連携によって保たれています。ところが、受験期のようにストレスやプレッシャーが強い時期には、このバランスがくずれやすくなります。
「勉強しなきゃ」「眠れない」「食欲がない」といった状態が続くと、ホルモンの分泌が乱れ、生理が遅れる・止まる・痛みが強くなるなどの変化が起こることがあります。
とくに、睡眠不足や極端な食事制限、カフェインのとりすぎも影響します。「若いから大丈夫」と思いがちですが、こうした無理が続くと、将来のホルモンバランスにも影響することがあるため注意が必要です。
よくある受験期の生理トラブル
1,生理がこない・周期が乱れる
ストレスや生活習慣の乱れによって「無月経」や「遅れ」が起こることがあります。1か月以上生理が来ない、3か月以上不順が続く場合は、ホルモンの異常が隠れていることも。放置せず、婦人科で相談してみましょう。
2,生理痛が強くなる
試験勉強中の姿勢の悪さや、血行不良も影響します。生理痛が強いと集中力が落ちてしまうので、鎮痛薬をがまんせず上手に使うことも大切です。「薬に頼りたくない」と言う方もいますが、適切な服用は体に悪影響を及ぼすものではありません。
3,PMS(月経前症候群)による気分の波
「イライラする」「涙もろくなる」「集中できない」、これも受験期にはよく見られる相談です。ホルモンの変動とストレスが重なることで、感情のコントロールが難しくなることがあります。カフェインや糖分をひかえ、リラックスできる時間を意識的にとることで、症状の軽減につながります。
生理と受験日が重なりそうなとき
「試験日に生理が来たらどうしよう」という不安もよく聞きます。当院では、ホルモン剤による月経移動をご案内しています。これはホルモンの働きを調整して、生理の時期を早めたり遅らせたりできる方法で、受験や旅行などの際によく使われます。
ただし、生理周期、薬の種類や飲み方、薬の効果には個人差があるため、試験日の1か月以上前に受診して相談するのが理想的です。直前の相談で対応が難しい場合もよくありますので、早めに計画しておきましょう。
試験当日の備え
どんなに準備しても、「もしも」に備えておくことが安心につながります。試験当日は、次のような備えも役立つでしょう。
- 鎮痛薬は必ず携帯する:痛みが出てからではなく、試験が始まる前に予防的に飲んでもOKです(医師や薬剤師に相談を)。
- ナプキンは余分に持っておく:試験中は交換のタイミングが限られるため、吸収力の高いものを選びましょう。
- 吸水ショーツを併用すると安心:長時間座っていてもムレにくく、万が一の漏れ対策にもなります。
- カイロを活用する:下腹部や腰をあたためることで血行が良くなり、痛みの軽減にもつながります。
また、当日は水分補給も忘れずに。冷たい飲み物は避け、常温か温かいものを持参すると体が冷えにくくなります。こうした小さな工夫で、「生理の日でも安心して集中できる」環境を整えることができます。
ご家族にできるサポート
受験期は、本人が思っている以上に心も体もがんばっている時期です。親御さんの一言がプレッシャーにも支えにもなりえます。「早く寝なさい」「勉強しなさい」よりも、「体調大丈夫?」「無理しないでね」という声かけが、思春期の娘さんにはなによりの安心になります。
また、生理痛や不調を話しにくいお子さんもいます。体調の変化に気づいたら、「婦人科に行ってみようか?」と気軽に提案してあげることも大切です。婦人科は病気の人だけが行く場所ではなく、「体のリズムをととのえる場所」でもあります。
生理の不調は「がまんすればいいこと」ではなく、すこしの工夫でコントロールできることが多いのです。もし生理の不調で困っているなら、早めに相談してみてください。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
受験に向けてがんばるみなさんが、心も体もベストな状態で本番を迎えられますように。
(文責:宝塚 かおるレディスクリニック院長・産婦人科専門医 福井薫)