- 1月 4, 2026
「閉経マネジメント」から考える女性の健康
あけましておめでとうございます。新しい年を迎え、みなさまが健やかに、そしてご自身の体とおだやかに向き合える一年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。
年齢を重ねるなかで、体の変化に戸惑いを感じることは決してめずらしいことではありません。とくに閉経前後の時期は、体調や気分のゆらぎをきっかけに、これからの健康について考え始める方も多いのではないでしょうか。
閉経は、誰にも訪れる自然なライフイベントです。平均年齢はおよそ50歳前後。その前後10年ほどの更年期にあたる時期は、ホルモンの大きなゆらぎによって体調が不安定になりやすいものです。
産婦人科医・吉形玲美先生のご著書『40代から始めよう! 閉経マネジメント 更年期をラクに乗り切る、体と心のコントロール術』は、この時期を、これから先の健康を左右する大切な転換点としてとらえ直す視点を提示した一冊です。
閉経は決してネガティブな出来事ではなく、自分の体と向き合い、未来の生活の質を高めていく大切なきっかけとなりえます。今回は「閉経マネジメント」の概要をご紹介しつつ、日々の診療で感じることも交えながらまとめてみたいと思います。
ホルモン変化がもたらす閉経のゆらぎ
閉経前後のゆらぎの中心には、女性ホルモン・エストロゲンの分泌低下があります。エストロゲンは生殖機能だけでなく、骨代謝、血管の健康、脂質のバランス、自律神経の安定、さらには脳の働きにまで深く関わるホルモンです。
そのため、分泌が急激に減ると体全体にさまざまな変化が現れます。
- のぼせ・発汗(ホットフラッシュ)
- 動悸やめまい
- 睡眠の質の低下
- 関節痛・筋肉痛
- 気分の落ち込み、不安感
これらは更年期症状と呼ばれるものですが、個人差が非常に大きいのも特徴です。「なんだか調子が変だな」という程度で済む方もいれば、日常生活に支障をきたすほどつらくなる方もいます。
さらに長い目で見ると、エストロゲンの減少は骨粗しょう症、心血管疾患、脂質異常症などの生活習慣病のリスク増大につながることが知られています。こうした背景を理解しておくことが、閉経期を安心して過ごす第一歩です。
「閉経マネジメント」という考え方
吉形先生が提唱する「閉経マネジメント」は、閉経をただ通り過ぎるのではなく、変化の意味を理解し、必要なケアを積み重ねていく考え方です。ポイントは次の4つにまとめられます。
- 自分のホルモン変化を知る
- 健診や婦人科受診でリスクを早期に把握する
- 治療や生活習慣改善を適切に取り入れる
- 心身のケアをバランスよく組み合わせる
閉経後には30年以上の人生が続きます。この長い時間を健康的に過ごすには、閉経を境に体がどう変わるのかを知り、対策を前向きに取り入れる姿勢が欠かせません。
「まだ大丈夫」と思っている時期から、ゆるやかに準備を始めること。それが将来の生活の質を左右します。
治療の選択肢とオーダーメイドケア
閉経マネジメントの中心となる選択肢のひとつにホルモン補充療法(HRT) があります。減少したエストロゲンやプロゲステロンを適切に補うことで更年期症状を改善し、骨粗しょう症の予防にも寄与する即効性の高い治療です。一方で、乳がんや血栓症のリスクがある方には適さない場合もあり、治療前には丁寧な評価が必要です。
そのほかにも、
- 漢方薬:冷え・のぼせ・不眠など、体質に合わせた調整がしやすい
- 生活習慣の見直し:筋肉量を保つ運動、バランスの良い食事、良質な睡眠
- 心理的サポート:不安や孤独感へのアプローチとして有効
など、複数の選択肢があります。
閉経期は「こうすれば正解」という画一的な方法があるわけではありません。むしろ大切なのは、自分の価値観や生活背景、体質に合わせてオーダーメイドのケアを組み立てることです。
日々の診療でも、「この症状がつらい」「忙しくて対策が難しい」といった声は本当にさまざまです。少しずつ、ご本人に合った方法を一緒に探していくことが何より大切だと感じています。
50代以降に高まる健康リスク
閉経によりエストロゲンの保護作用が弱まると、健康上のリスクは増加します。とくに注意したいのは次の3つです。
- 骨粗しょう症:骨量が減り、骨折リスクが上昇
- 心血管疾患:動脈硬化が進行し、心筋梗塞・脳梗塞のリスクが増大
- 脂質異常症・糖尿病:代謝のバランスが乱れやすい
これらは年齢による変化と片づけられがちですが、実際には生活習慣の影響も大きく、早めの予防や定期的な健診が将来の健康を守ります。吉形先生も本書の中で、閉経を“健康の総点検”のタイミングとして活用することを勧めています。
心のケアと、閉経を前向きにとらえる視点
更年期は体だけでなく、心にもゆらぎが訪れます。家族の役割の変化、仕事の節目、親の介護など、多くの出来事が重なりやすい年代でもあります。「なんとなく気持ちが沈む」「ひとりで抱え込んでしまう」といった声もめずらしくありません。
こうした心理的変化を軽視せず、必要に応じてカウンセリングや心理療法を取り入れることも大切です。身体のケアと心のケアは、どちらか一方ではなくセットで整えていくものだからです。
「閉経マネジメント」が伝えるのは、閉経を「終わり」ではなく「新しいステージの入り口」としてとらえる視点です。閉経後の長い時間を健やかに過ごすために、今できる準備はいくつもあります。
当院でも、閉経期の不調や不安に寄り添い、一人ひとりに合ったサポートを大切にしています。気になる症状がある方は、どうぞ遠慮なくご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
年の初めは不思議と気持ちも引き締まりますね。どうぞ健やかな一年をお過ごしください。
(文責:宝塚 かおるレディスクリニック院長・産婦人科専門医 福井薫)