- 5月 2, 2025
暖かくなると増える、陰部のかゆみ
院長の福井薫です。このコラムは日々の診療で相談される内容をもとに、月に一度くらい更新していきたいと思います。
さて、気温や湿度の上昇により、女性の身体にもさまざまな変化が現れやすくなります。私たちのクリニックでも、この時期になると「陰部がかゆい」「おりものがいつもと違う」といった症状で受診される方が目に見えて増えています。
なかでも多いのが「カンジダ腟炎」。かゆみの強さや再発しやすさから、不快に感じられる方も多いのですが、実はとても身近な原因で起こる症状なのです。今回は、カンジダ腟炎についてご紹介します。
カンジダ腟炎とは
カンジダ腟炎は、「カンジダ・アルビカンス」などのカンジダ菌という真菌(カビの一種)が腟内で異常に増殖して起こる感染症です。実はこのカンジダ菌、健康な女性の腟内にもごく普通に存在しています。
通常は、身体の免疫力や腟内のバランスによってコントロールされており、問題を起こすことはありません。しかし、ストレスや疲れ、抗生物質の使用、湿気や蒸れなどによってバランスが崩れると、菌が一気に増殖して症状が現れるのです。
カンジダ腟炎の症状
典型的な症状は以下のようなものです。
- 陰部や腟の強いかゆみ
- おりものが白くてポロポロしている(カッテージチーズ状)
- 陰部の赤みや腫れ、ヒリヒリ感
- 排尿時や性交時の痛み
とくに「かゆみ」が強いのが特徴で、日常生活に支障をきたすほどつらい場合もあります。
なぜ暖かくなると増える?
気候がおだやかで暖かくなるとカンジダ腟炎が増える理由は、おもに「湿度」「気温」「体調の変化」が関係しています。
湿気の多い梅雨時は下着の中が蒸れやすく、カンジダ菌が好む環境が整ってしまいます。また、エアコンによる冷えや、梅雨時特有の体調不良、ストレスの蓄積などで免疫力が下がると、普段は抑えられている菌が一気に増えてしまうのです。
こんな方は要注意
カンジダ腟炎は誰にでも起こりますが、とくに以下のような方は注意が必要です。
- 抗生物質を使用した後の方(腟内の善玉菌が減少)
- 妊娠中の方(ホルモンバランスの変化)
- 糖尿病のある方(血糖値の高さが菌の増殖を助ける)
- 睡眠不足やストレスがたまっている方
- タイトな下着やナイロン素材をよく着用する方
こうした条件が重なると、カンジダ腟炎を繰り返しやすくなる傾向があります。
治療法・予防のポイント
カンジダと似た症状を引き起こす腟炎(細菌性腟炎、トリコモナス腟炎など)もあり、かゆみの原因がすべてカンジダというわけではありません。そのため、かゆみやおりもの異常の症状がある方には腟分泌物の検査を行うことが多いです。
治療には抗真菌薬を使用します。腟に挿入するタイプの腟錠やクリーム、場合によっては内服薬を使用することもあります。
また再発を防ぐためには、日常生活での工夫が大切です。
- 通気性の良い綿素材の下着を選ぶ
- 下着やナプキンはこまめに交換する
- せっけんやボディソープで洗いすぎない(腟内の善玉菌を守る)
- 湿ったままの服を長時間着続けない
- 睡眠・栄養・ストレス管理など、免疫力を保つ生活を意識する
デリケートゾーンの話は、なかなか人に言いにくいし、相談するのをためらってしまいますよね。でも「かゆみ」は身体からの大切なサインですから、放置せずに、お気軽にご相談ください。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
ゴールデンウィーク、どこか遠くへ出かけたくなりますね〜
(文責:宝塚 かおるレディスクリニック 院長 福井薫)